三井生命保険は、平成31年4月より大樹生命保険に社名を変更します。これは平成27年秋に日本生命保険により買収され、三井グループから脱退したことに起因します。3年間も商号が変わらなかった理由は、三井生命保険のブランド力により集客が図れたので、日本生命側はそれを急がなかったからです。一方、三井側は、もはや少数株主となった元グループ企業が三井の名前をいつまでも使用することを良しとしませんでした。

三井は住友と銀行、建設、損害保険等の分野で三井住友グループが誕生しており、三井住友銀行は、三井生命と住友生命との統合を後押ししてきました。しかし、住友生命は三井生命の増資引受や人材派遣により経営支援を続けてきたにもかかわらず、最終的には合併に合意しませんでした。

三井生命の契約者と約した運用利回りが低金利により逆ザヤ状況が業界で最も悪かったことに加えて、住友生命が他社に先駆けて販売チャネルの多様化を進めて営業力を確実に高めていたことも影響していました。さらに三井生命の営業コストは同業他社に比して高いことも統合の足かせと映りました。

一方、日本生命保険は、長年に渡って死守してきた保険料収入のトップの座を第一生命保険に奪われたため、これを奪還する必要性がありました。さらに、窓口販売に注力している三井住友銀行との親密性を高めることを期待しているという観測もあります。

さて、三井生命の歴史を紐解きますと、第一次世界大戦が勃発した1914年に銀座の商店主たちを発起人として高砂生命保険が創業しました。その関東大震災により経営難に陥り、1926年に三井合名会社が大株主となり27年に三井生命保険株式会社へ商号変更し、三井グループの社員の保険を一手に引き受けたことが創業期にあたります。

M&Aにより事業規模を拡張してきた旧財閥企業は、1世紀を経た現代においてもM&Aにより変革を繰り返しています。

【写真の解説】夏の伊勢神宮