はじめに

ATMやネット決済の普及により、銀行の窓口に出向く機会が大幅に減りました。また、手数料が安いネット銀行により、利便性はさらに向上しています。一方で、相続手続のような特殊業務は、相続センターでの集中管理に伴い支店の業務レベルの低下と待ち時間の長期化が進んでいます。特に、ネット銀行は相続手続業務のノウハウの蓄積が少なく、遅々として相続作業が進まない弱点を確認しました。先日60歳代で突然死した方の相続においては、ご家族への財産管理状況が十分に伝わっておらず、口座確認もかなり困難な作業となりました。今回は60歳代の方々に向けた万一を想定した預金管理をお伝えします。

日常の預金管理の見直し

*通帳の保管期間

預金通帳は、捨てずに保管されていますか?預金通帳の保管目的は、経済生活の確認という側面の他に、“将来の相続対策”があります。相続税法では、死亡以前3年以内に相続人への贈与は、贈与税の非課税枠内の贈与であっても相続財産に加算する(持ち戻し)規定があります。このため、相続税申告書には贈与の有無を確認するため過去3年分の預金通帳(写)を添付します。

*合計記帳の有無の確認

通帳記帳を忘れて合計記帳されていませんか?後日合算記帳分の明細書の再発行は可能ですが、定期的に通帳記帳するよう心掛けて下さい。仮に、遠隔地にある金融機関で、頻繁に通帳記帳が必要である場合には、ゆうちょ銀行を初めとする近隣の金融機関に変更することもご検討下さい。

*取引銀行の上限は3行

取引金融機関が5行以上ある場合は、3行までに集約しましょう。山一ショック後10年程度はおペイオフ対策として預貯金の分散が財産管理の定石とされていました。現在は、金融機関の破綻前に合併による救済が中心となっており、預金口座の分散に有意性は認められなくなりました。財産管理上口座を複数持つ必要がある場合には、同一支店で複数の口座を持つか、同じ金融機関の別の支店に口座を開設して対応します。4行以上の金融機関の口座が必要である場合には、三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行をお奨めします。

*1行での預入金額の上限

1つの金融機関での預入は、30百万円プラスアルファと考えます。定期預金は1口10百万円とし、普通預金は5百万円を上限とします。従って、総合口座(普通預金+定期預金)は1口座15百万円を上限とします。

*窓口販売で購入した投資信託

万一の場合、銀行で購入した投資信託は、相続人への引継はできず解約することとなります。ご親族へ購入した投資信託を承継する場合には、一旦売却して証券会社で買い直しする必要があります。

*引落口座の一本化

公共料金、税金、電話料金、ケーブルテレビ、カード等の自動引落は、1つの口座で集中して引き落としします。ちなみにネット銀行では固定資産税の引落を引き受けないケースがあります。

*ご家族にも同じ銀行口座を開設する

少なくとも配偶者は同じ金融機関に口座を開設しておきます。他の金融機関をご利用であれば、残高がゼロでも構いません。

銀行以外の金融機関の整理方法

*証券会社

有価証券は名義ごとに管理されているので複数の証券会社で分散管理する必要はありません。逆に、複数の証券会社を利用している場合には、投資効率向上のため1つに纏めて下さい。過去の相続の事例では6つの証券会社に口座を分けているものがありました。

*金の積立貯蓄

田中貴金属工業の金やプラチナの積立は、そのまま継続して何ら問題はありません。相続時にはご親族様は積立を継続することはできず、現物の金貨としての引渡か売却して換金するかいずれかの方法を選択することとなります。インフレヘッジとして金の保有は有用です。

金融機関の使い分け

*ネット銀行

ネット銀行は、ネット証券との取引口座、日々の現金引出(財布としての機能)として利用になります。カードの所在、パスワードはご家族が解るよう管理します。取引明細が随時交付されないのでご家族への贈与や家計費の送金には利用せず、取引内容を特定します。ネット銀行を利用する場合には、取引データを保存すること(紙での管理が望ましい)が必須です。

*信託銀行

定期預金として長期預入する資金は、信託銀行の利用をお奨めします。信託銀行は、年金資産の運用管理を主たる業務としており、財産管理を主目的とした金融機関で、支店窓口での相続手続は、非常に円滑です。店舗数が主要駅に限定されている点が難点ですが、大きな資金の預入先として最適です。

*メガバンク

メガバンクは、個人客が集中して窓口の混雑ぶりは異常です。住宅ローンの借入先としては最適で、公共料金・税金・カード決済等の定型的な取引に利用します。相続手続の対応は、最低2時間要する程混雑しています。担当者の業務スキルに格差があるため、その都度異なる指示があることも日常茶飯事です。貸金庫は、解約とご親族での再契約まで行内での慎重な審査により1ケ月以上の時間を要します。

*地方銀行

地方銀行は、ベテラン行員による窓口対応が優れています。残高証明書の交付は即日行われ、生産性が非常に高いことが特筆できます。ただ、金融機関による格差も大きく、メガバンクの支店がない地区では、逆に個人客の集中が起きるので信用金庫との併用が必要となります。

ところで、地方銀行は沖縄を除く全国あちこちで統合されることが予想されます。店舗の統廃合により不便となる可能性はありますが、金融機関自体が消滅するリスクは小さいです。

*信用金庫

信用金庫の相続手続は、本店集中業務です。ただ、窓口での対応は比較的円滑で待ち時間も長くありません。店舗網も発達しており、日々の現金引出、公共料金・税金・カード決済等の日常の決済業務に適しています。

*ゆうちょ銀行

郵便局の名残でしょうか、相続手続は他の金融機関と比較すると委任状の書式を初めとしてかなり異なります。もちろん、お住まいの最も近くに店舗がある金融機関です。都内23区以外にお住まいでしたならば長期資金の預け先として積極的に活用すべき金融機関の一つです。ただし、民業圧迫回避を理由に預入限度額は13百万円となっています。(平成28年4月より10百万円から切り上げ)

*外国銀行

まれに外国銀行に預金口座を開設されている方がいます。口座番号が解らず相続手続ができなかった事例すらもあります。基本的には、外国銀行との取引は相続手続を前提に考えますと解約されることをおお勧めします。今後も継続して使用される場合には、相続手続を日本語の文書で書かれたものを保管して下さい。

伸びやかな若竹に心地よい風が吹きます。テラスから見下ろす山里の景色は素晴らしい眺めです。秋に再開する里山ガーデンに足を向けて下さい。

GWに満開のポピーを見ることは初めての経験です。

まさに春爛漫です。青、黄、橙、赤と多彩な花畑は圧巻です。

花の絨毯はその美しさと空気感がこの上ない幸福をもたらします。

きんぎょ草もパンジーとの寄せ植えで輝いています。配色の巧みさもこの里山の素晴らしさ一つです。

峻烈な赤に目を奪われます。