ESやCSRを行うことで守りのメンタルヘルスから攻めの経営戦略となる

1 はじめに

平成元年度生まれの有職者(会社員)男女 250名(平成24年4月入社の方)の意識調査(トレンド総研2012年)では、平成生まれの人は、仕事において求めていること
1位にやりがいが感じられること
2位会社の人間関係が良好なこと
3位人間的に成長できること
としています。若い人は、自分の能力を伸ばしたいと考えてはいますが、年収を上げたいとはあまり考えていないという結果が出ています。

2 従業員の満足感の充足

従業員がどうしたら満足するかということで有名な理論があります。ハーズバークの2要因論(動機付け・衛生理論)です。
従業員に「仕事上どんなことによって幸福と感じ、また満足と感じるか」「不幸や不満はどんなことで感じるか」という質問をしたところ、人の欲求には2種類あり、2つの要因(“衛生要因”・“ 動機付け要因”)から人の満足・不満足を分析することから2要因論といいます。
衛生要因”はこれを満たしても満足にはつながらないというもので、不満を防ぐものとして金銭的報酬や作業条件、対人関係などを指します。

それに対し、“動機付け要因”は、これが満たされると満足感を覚え、欠けていたとしても不満足にはならないものです。
①    仕事の達成感
②    周囲からの承認
③    自己成長感
④    責任感
⑤    仕事の自由度
などがあります。不満を防ぐことも重要ですが、より高い業績へと導くには“動機付け要因”が必要です。

3 “動機付け要因”を社内で満たす仕掛け

まさに従業員満足(ES)とは“動機付け要因”を社内で満たすしくみや仕掛け作りをするということです。ステークホルダーを満足させるという意味で会社内に目を向ければ、従業員満足の向上であるし、社外に目を向ければCSRの取り組みになるため、ESが高い会社はCSRの取り組みにも積極的です。その両輪がうまく動き、業績向上につなげている会社があります。
神奈川県横浜市栄区にある石井造園株式会社は、ESが高くCSRにも積極的な従業員10名の会社です。この会社が1年に一度行うCSR報告会は近所の住民、近隣の学校関係者、市の職員などが100人以上集まる暖かな雰囲気でいて、従業員がいきいきとCSRに取り組んでいる様子がうかがえる素晴らしい催しです。従業員一人一人が、その催しでは、スポットライトがあたり、誰もがこの会社では重要人物として大切にされていて、地元の人に愛されています。働く喜びが伝わってきます。業務完了時に、顧客満足度を図るアンケートを依頼し、それをHP上で公開しています。
石井社長は「従業員に対して、やりがいのある仕事と公平かつ遅延なき利益の分配を約束します」と明言し、給料日には一人ひとりの従業員と給与伝票の読み合わせを行い、反省と翌月以降に向けた意思統一を行っています。
石井社長曰く、「CSR活動で重要なのはトップが本気かどうか、トップの本気度が伝わると、従業員が意欲を持って取り組むようになり、好循環となって業績にも反映されます。」とCSRと業績との関係を語っておられました。

文責:Grow社会保険労務士事務所  磯部 和代


 CSRとは
「Corporate Social Respon-sibiity」の略で“企業の社会的責任”と訳されます。企業が利益を追求するだけではなく、組織活動が社会へ与える責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定を行うことを指します。