遺言書は、“公正証書遺言書”・“自筆遺言書”・“秘密証書遺言書”の3種類があり、ほとんどのケースが公証人の立会の元で作成される“公正証書遺言書”です。

昨年夏に、初めて“自筆遺言書”による相続が発生しました。実は、まだお元気な時に“自筆遺言書”を作成するので指導して欲しい旨のお申し出があった案件です。配偶者にほとんどの財産を相続する内容で、かつご相続人間で特に争議となる様子でもなかたことと、記載方法は手引書に従ってきちっと清書されていたので、正式な遺言書とすることに何ら問題ありませんでした。

相続が発生した時点で、“自筆遺言書”と“公正証書遺言書”との手続は、若干異なります。自筆遺言書は記載方法が適切で遺言書として効力があるか家庭裁判所へ提出して“検認”を受ける必要があります。裁判所での抱えている事務量にもよるようが、提出から約3週間を要してようやく“検認”を終えました。

この事例で失敗したのは、“遺言執行者”を遺言書で予め定めておかなかった点です。相続人が多数いる場合に、財産分割の手続きに際して“遺言執行者”の定めがある方が、簡便に行えるものもあります。特に、相続人が遠隔地や海外に在住する場合には、これら相続人の所定書類への署名を必要としないので有効です。“遺言執行者”は特別な資格を有する必要はなく、相続人間の争いがない場合には、相続人の中から選任することもできます。

遺言執行者”の選任は、遺言書以外でも相続開始後に家庭裁判所に選任の申し出を行うことでも可能です。ただ、この手続きでも約3週間の時間を要しました。

このように、“自筆遺言書”は“公正証書遺言書”に比して相続開始後に手続を要する手間があります。ただ、財産分割における有利不利はありません。

遺言書作成上の留意事項は、次の通りです。

  1. 遺留分を考慮できない遺言は、公証人や2名の証人の立会の元で作成される“公正証書遺言書”とする。
  2. “自筆遺言書”は誤字脱字のないことは勿論のこと、相続人間でトラブルが生じない場合にのみとする。
  3. 遺言執行者”を遺言書上で明記する。但し、相続人間でトラブルが生ずることが想定される場合には、相続人以外の第三者とすることが良い。
  4. 弁護士を“遺言執行者”とする場合に、百万円単位の執行費用を求められるケースもあるので事前にきちっと交渉することが肝要である。

160126遺言書