宮ノ下は、明治11年に創業した富士屋ホテルを中心とする外国からの旅行客向けに発展してきた温泉街です。書画骨董商が何軒も軒を連ねる街は、神奈川県内では宮ノ下と鎌倉ぐらいでしょう。富士屋ホテルの道路の向いに建つ「大和屋商店」は明治中頃に開業した老舗です。古伊万里や浮世絵を眺めていると、不思議に心穏やかになるのは、日本の伝統文化に触れる安堵から来るのでしょうか。風景画の浮世絵は眺めていると絵の中に引き込まれるような力強さを感じます。お気に入りが見つかったならば博学の5代目社長に詳しく解説していただきます。

屋  号:大和屋商店

住  所:足柄下郡箱根町宮ノ下224

電話番号:0460-82-2102

営業時間:10時~17時

定休日:年中無休

【プロローグ】 店頭の綴織は、3年前の茶色から藍色に交換されました。白壁に引き立ちます。古美術を通じて、日本の歴史を知るだけではなく、世界に誇る伝統美を学ぶことができます。

【古伊万里 色絵竹林の賢人文通し物 七種十客揃】 昔は祝事も自宅で行うことを常としていたので、10脚も備えておく必要がありました。このように陳列されると圧倒されます。

【古伊万里 蛸唐草文 銚子】 蛸唐草の磁器は、急須ではなく日本酒を注ぐ銚子で、3合以上入りそうです。

【古伊万里 色絵 賢人文 七寸皿】 古伊万里は、17世紀後半から18世紀前半にかけて欧州に輸出されていました。18世紀前半になってようやく欧州でも磁器が作られるようになり、18世紀後半には輸出されなくなりました。

【古伊万里 赤絵唐花文 猪口】 伊万里焼の産地は、佐賀県の有田や塩田、長崎県の波佐見、三川内でつくられていました。江戸時代に伊万里港から積み出されたことから伊万里焼と呼ばれました。

【蒔絵の展示台】 明治の創業当時から使用されている展示台です。外国人のお客様向けに高さが他の展示台より高く設えています。

【歌川広重 富士三十六景 はこねの湖すい】 富士山を主題として描かれたシリーズで、葛飾北斎の「富嶽三十六景」を参考にしたものとされています。

【歌川広重 東海道五十三次 箱根】 東海道最大の難所の登りも終わりに近づく頃、岩肌を露出した険しい二子山が間近に迫り、遠く芦ノ湖が見え始め、白い富士山がかすかに望めます。

【歌川広重 人物東海道五十三次 箱根宮ノ下】 大和屋商店二階から見ると、山の形状は現在もこの図と同じようです。

【エピローグ】 浮世絵から店内に視点を移すと一瞬で現代に舞い戻ったような錯覚を感じます。