債務上限引き上げは、米国議会での永遠のテーマ

米国FOMCの内容はタカ派的な意見が出ていた事から、発表直後からドルが買われやすい状況となりました。翌日の日本株市場も円安が進行した事で前日比200円高。日本経済は米国経済に大きく影響をうけることは常ですが、これからの米国金融政策には一層の注意が必要だと思われます。その理由を説明しましょう。

今、世界が注目する米国金融政策のポイントはQE3(金融緩和政策)を今後縮小するのかどうなのかです。このテーマを挟んで共和党と民主党とがしのぎを削っており、議会の方向性も本件については混沌を極めた状態です。つい先日(10月)はそのおかげで、米国債のデフォルト騒ぎにまで発展しました。結局は期日ぎりぎりになって債務上限引き上げが可決されて一難を逃れられたのですが、この債務上限引き上げというテーマは今後も議会の中心的争点であることに変わりはありません。そもそもドルを刷りまくる政策(金融緩和)が、「経済成長に寄与していない」との見解からQE3縮小の話題がもちあがったのですが、今現在は米国経済がある程度持ち直しているという前提で、これ以上の金融緩和は無用との意見がでています(タカ派的見解)。従って、経済指標発表には必然的に注目が集まり、そのたびにQE3縮小の話題から、市場は神経質な動きを余儀なくされるのです。

例えば、先月末にかけて開催されたFOMCも事前の予想通り、月額850億ドル(約8兆3500億円)の資産購入継続が決定した一方で、声明文で強気ともとれる景気判断を示した事でFRBが年内にも資産購入の縮小を開始するのでは、との見方が市場に広がり、株安、金利上昇、ドル高が進みました。しかし、政府機関の閉鎖事件や財政協議の先行き不透明感から、経済成長の加速が望めないのは明らかです。

結論としては、“状況確認がとれない中”での縮小可能性は低く、一方向に市場が動く事はなくなりました。今月のFOMCに持ち越されたようなのですが、今月とて経済成長の判断は発表を待つまでもなく、通常よりもその判断は困難を極めます。なぜなら、先の政府機関の閉鎖によって、前回、雇用統計発表が遅れ、10月、11月、12月の経済指標の歪みからこの期間の景気判断は困難を極めるからです。

QE3縮小が日本経済に及ぼす影響とは・・・

この不透明感が幾分緩和されたのが、今回のFOMCであったとは思いますが、少なからずデフォルト騒ぎが短期間で2度も起きれば、国民の指示を失う可能性が高まるため、中間選挙後の12月頃での債務上限引き上げ、暫定予算策定などでは両党合意することは間違いないでしょう。従って14年1月〜3月期には不透明感が緩和し、前期の反動も加わって経済成長が加速すると見込まれます。未だ神経質な変動要因の主因であるQE3縮小開始は、来年3月中旬のFOMCで決定されるはずと見る人も多数いるようです。つまり、それまでは日本市場とりわけ為替も株も神経質な動きが続きそうです。

しかし、このQE3は日本にとっても大きな意味を持ちます。QE3が継続しているうちは、流動性資金は新興国市場に流れインフレ上昇圧力となるでしょう。中央銀行は金融引き締めぎみの政策をとるため、結果的に新興国の景気減速リスクが高まります。一方、為替は円安進行が停滞するので、日本にとってはQEの継続は日本企業の業績を支えてきた2つの柱が失われるという事になるのです。業績回復がなければアベノミクスも頓挫しかねないとも限らないのです。日本経済にとっては、QE3縮小は大きな意味を持つのです。

 Kaneco Consulting Firm
代表: 金子 丈次郎
国内外金融機関で営業管理職を経験し、米国ヘッジファンド会社勤務を経て
リーマンショック後の2009年にコンサルタントとして独立。
現在は、現場に密着した営業コンサルタントを中心に活動を行い、
また、経済セミナーや経営セミナー講師として各地に赴いている。