「ウサギは跳ねる」と期待された2011年の日本の株式相場も旧正月を迎えるにあたり当初の勢いから若干色褪せたようです。ここで、今一度お考えいただきたいのは、皆さんが毎年繰り返す失敗は、『当てに行くこと』です。重要なのは現状把握であり、予想ではありません。

ユーロ高は本来の姿か?

さて、主要通貨を並べてみると、ユーロの強さが目立っています。理由は、昨年12月の消費者物価指数が2.2%と上昇傾向が強いことが露呈したからです。考えられることは、周辺市況から鑑みて近々利上げが行われると言う期待感が浮上し、同国通貨(今回はECBによる利上げ期待からユーロ)が買われます。では、昨年大きな相場下落要因となった欧州通貨危機はいったいどうなったのか?依然としてくすぶっているのも事実で、実質的には何も解決されていません。ポルトガルが市場で国債発行となれば、所謂日本で言うところの札割れが意識された微妙な動きになりました。つまり、世界の資金の流れなど近視眼的な見方で予想をするのは100%無理なのです。たまたま今はネガティブニュースではなく、早期利上げ期待に投資家の目が集まっているので、欧州各国の財政状況についてはフォーカスがずれていると判断されます。であれば、マーケットを読むのに重要な事は1つ。事実の認識だけ。そして、通貨の動いている理由、株の動いている理由をみつけていくことしかありません。

意外に厳しい2011年

年頭恒例行事となった日経新聞社掲載の経済評論家やアナリスト達の経済予測は押しなべて楽観的なものが多かったですね。私の見方はというと、特に日本の場合はこの3月までの数字はどこの企業も読めているはずで、ここまでは中国、アジアエマージング諸国からの需要などで売上げ予測が立てられるはず。同諸国へ輸出している企業は好決算が予測されてしかるべきです。しかし、それ以降となると、例年にない難しい経営局面に立たされることになるのではないかとも思っています。不安要素は枚挙に暇がありませんが、特に注目したいのは経済を牽引していた国のトップが入れ替わらいとも限らないとも思えるからです。特にまだ任期3年を残して胡錦涛主席は後継者を決めにかかっている、これは前代未聞の話で任期中にこのようなことをする同国トップは初めてなのです。オバマ大統領とて、経済政策、外交政策に大した功績を挙げていないのが事実。日本は言わずもがな・・・
2011年も気が抜けない年であると強く感じている次第です。事実認識を見誤ることなく、自分なりの考えを持ってメディア報道を捉えることを心がけてください。今年もマーケット徒然草が皆様の市場把握の一助となれば幸いです。                           (金子 丈次郎)

● 金子丈次郎氏の略歴 
国内大手証券、米国新聞社、米国資産運用会社、米国ヘッジファンド会社に勤務。現在は一投資家であると同時に、セミナー講師や各種コンサルタントとして活躍中。