針小棒大だったり、小さな自分の経験から出ていなかったり、過去出版された本の焼き直しだったり、著者の経歴が実はたいしたものでなかったり、汎用性がなかったり、わずか数年で内容が古びたり、というビジネス書が大半だという断言は、度が過ぎるだろうか。
日垣隆さんは鬼才である。書店員やトラック配送員、編集者、ジャーナリスト、ギャンブラー、経営者などさまざまな職業を経験したからではない。所得税を1億円納めていたからでもない。高等数学を瞬時に駆使して世界中のカジノで勝ちまくってきたからでもない。カジノに比べれば株価の動きなど止まって見える目を持つからでもない。年間購読料1万円のメールマガジンの読者が1万人以上いるからでもない。
日垣さんは昨年12月グアムで重篤な脳梗塞に倒れた。医者に「プロとして文章を再び書くのは不可能」と診断されたほど絶望的な状況に陥り、死の淵を垣間見ながらも、負けず嫌いの性格(?)なのか、大金を投じて自費でリハビリの機会を増やし、入院中だからこそ株やFXで軽々と稼ぎ、左手で長文のメルマガをiPhoneで書き、奇跡的な回復途上にある。その過程を「チンポ権」や「アナル権」という新語も用いて包み隠さず記した『脳梗塞日誌』(大和書房)は希望の書であり、医者の言うことを守ったら回復できないという恐ろしい事実を明らかにした。この『脳梗塞日誌』は健康な人こそ読んでおくべきで、いや、この本に限らず、日垣さんの本はどれも読んでおくほうがいい。鬼才の思考や行動から学び、真似をする好機を逃したらもったいない。
掲題書はそんな鬼才・日垣さんのビジネス書である。仕事にすぐ生かせる100の鉄則をまとめた本で、経営者にも会社員にも自営業者にも学生にも役に立つ。たいていの問題や悩みは解決する。
なお、絶版になっていても心配しなくていい。日垣さんのサイト「ガッキィファイター」(http://gfighter.net)で買うことができる。自分の本を自分のサイトで売る仕組みを日本の作家の中で一番に作りあげていたわけで、こういうことを「先見の明」や「ビジネスセンス」と言うのではないだろうか。
(文責:ジャーナリスト 西野浩史)