前号に続き、コーチングの後半を解説していきます。コーチングの重要なポイントは、ゴールも やり方も本人が決めることでした。そして、コーチの役割はマラソンの伴走者であり、サポートす る人、また、鏡となる人でした。では、具体的にどのようにコーチングを進めていくか、コーチン グの基本スキルを解説していきましょう。

コーチング の基本スキル 

コーチングには以下のような複数のスキルが求められます。

1. 信頼関係をつくる
 2. 相手の思いを引き出す
 3. 可能性を広げる
 4. 振り返り
 
コーチングスキルのひとつひとつを覚えることが大切なのではなく、全体の流れ、コーチングサイクルを理解し使えるようになることが大事です。もっとも大切なのは、セットアップで ! まずは相!手に安心してもらい、自由に話せる環境をつくることからはじめましょう。

信頼関係をつくる

はじめにコーチングを行なう際、大切なのはコミュニケーションスキルです。コミュニケーションには、言葉によるコミュニケーション(言語)と言葉以外によるコミュニケーション(非言語)があります。非言語によるコミュニケーションの影響は非常! に大きいので、自分が発している非言語にも注意を払う必要があると同時に、相手が発している非言語コミュニケーションにもアンテナを高く立てることが大切なポイントです。

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信頼関係を築くスキルとして次の3つが挙げられます。

1. ペーシング
  ペーシングとは、相手に合わせること。人は、自分に合わせてもらうことで、安心します。 例えば、相手の話すスピートやうなずき、姿勢などです。
 
2. リフレイン(繰り返し)
相手が”漠然とした不安”を抱えていて”自信がない”とき、安易な励ましの言葉は役に立たないことがあります。相手が励ましの言葉に反論してきたとき、自信がなさそうなときなどは、相手の感情!  を受け取り、話した内容をリフレイン(繰り返す)と効果的です。

3. 沈黙のスキル
  相手が内側に向かって深く考えているときは、待つことが重要です。相手の思考の流れを止めない!  !ようにしっかりと待つことが大事です。

相手の思いを引き出す 

相手に表れている違いや変化、成長や成果にいち 早く気づき、それを言葉にして相手に伝えます。これを承認(認める言葉)と言います。承認には右表にあ るように「結果」を伝える承認、「事実」を伝える 承認、そして、「気持ち」を伝える承認の3つがあり ます。

 
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可能性を広げる

 ゴールのイメージが明確になり、現状とのギャップがはっきりすると、いろいろな課題が見えてきます。ここでは、 可能性を広げる方法として「フィードバック」と「質問」についてご紹介します。
 
1. フィードバック
   コミュニケーションを交わしている相手が、外界に向けて伝えていることを、鏡のようにそのままその人に返すこ!   とであり、「成長促進」を援助するための一つの方法が「フィードバック」です。
   
  (1) 客観的事実を返すフィードバック
   見えていること、聞えていることを具体的な事実で伝える
   例:話をしている間、ずっと下を向いていました。
   
  (2) 主観的事実を返すフィードバック
   あなたの内側で感じたことを「私」を主語にして伝える
   例:私には・・・見える / 聞える / 感じる
   
   2. 質問
   質問されると人は自動的に考え始めます。質問の効果を充分に理解した上で、相手の目標達成を加速させる質問のレパートリーを増やし続ける必要があります。コーチングの質問には次のような効果を狙って質問を使います。
   
  (1) 状況を聴く質問
   「今、どういう状態ですか?」*具体的に聞かせてください。
   
  (2) 目的(パフォーマンス目標)を聴く質問!
   「目標は何ですか?」*どうなったら良いと思いますか? / *どこまでを目指しますか?
   
  (3) 問題を特定する質問!
   「成果を上げるために問題になっていることは何ですか?」*その問題を引き起こしている要因は何ですか?
   
  (4) 学習目標を聴く質問
   「その成果を上げるために、何を学習したらよいと思いますか?
   
  (5) フォーカスするポイントを聴く質問
   「どの点に注意すると良いと思いますか?
   
 (6) 手順を聴く質問!
   「どういう手順で進めていきますか?」*どんな障害が想定できますか?
   
   「」は代表的な質問、*はそれに続く質問

 

 振り返り

体験によって気づいたことや観察されたことを振り返って、新しい発見や疑問点を確認する段階です。 対象者が自ら洞察や質問を行なうようにもっていくことが大切です。そして、今後のアクションを対象者自らが選択す ることが、次のセットアップ会話につながていきます。
   
文責 株式会社HRラーニング・サーチ 仲本親司