チームビルディングとは、チームのメンバーがそれぞれの能力を主体的に発揮しながらも、一丸となって目標達成を目指す組織のことを言います。今回は、そんなチームビルディングについて紹介します。

なぜ、チームビルディングが必要なのか

昨今の日本経済は”VUCAワールド(*)”と呼ばれるように変化が激しく不確実性が高い環境では、新しい価値を生み出す核となるのは、個人の主体性・創造性・情熱であり、組織づくりではそれらをいかに解放するかが重要となってきています。多くの産業が成熟し、それによって更に技術が発展・複雑化しています。また、消費者の購買行動なども多様化したことで、企業もより細かい対応を求められるようになりました。

これまで、日本のチームは「一人のリーダーが全責任を負う」チームだと言われてきました。一方、欧米では「全員がそれぞれにリーダーシップを発揮する」チームだと言われています。日本のチームの実態は「個人主義」で、常に個人に対して成果を求められてきました。しかし、これは、同時に個人へのプレッシャーやストレスを生み出し、結果的に能力が十分に発揮できない環境を作り出しています。そのため、組織力をアップするには、個人の能力に頼るよりも、まずチーム全体を捉えた組織マネジメントが必要となります。

*VUCA:Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧さ・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、2010年代に入って現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われている。

チームビルディングの目的

 階層別に実施する際の目的は以下にご説明します。

1. 新入社員向け
内定者や新入社員に向けてチームビルディングを実施する場合は、「主体性を持って仕事に取り組む」、「仕事を最後までやり遂げる」などの社会人としての基本姿勢を学ばせることを目的としています。また、メンバー間でお互いの強みや弱みを把握し、それを互いに補い合える関係を構築させるなど、チーム間のコミュニケーションスキルを高めるなどの目的もあります。
2. 中堅社員、リーダー向け
この層にチームビルディングを実施する目的としては、新しい組織の基盤となるリーダーの育成や、組織の変革を担う人材を育てたいという点が挙げられます。
3. 管理職向け
ミドル・マネジメント層と呼ばれる管理職とはトップの意思を中堅社員やリーダー、および、若手社員に伝達したり、目標達成のために戦略を実行する、いわば中間管理職です。そのため、この層へのチームビルディング実施の目的は、ミドル・マネジメント層の間の部門の壁を取り払い、皆で同じ方向を向いて目標を目指す体制づくりが挙げられます。
4. 経営者向け
トップ・マネジメント層である経営者や経営幹部は組織のトップに立ち、経営に関する方針や計画を策定し、組織の統制を担います。そのため、この層へのチームビルディングの目的は、まず組織のビジョンを共有し、一丸となって組織運営に取り組めるようにすることです。そして、自主的に動き、組織を率いる能力をアップさせるという目的もあります。

次に、組織や部門全体で行う際の目的を見てみましょう。

1. コミュニケーションの活性化、マインドセットの醸成
現代はダイバーシティが叫ばれ、属性や雇用形態など様々なメンバーが混在する組織になっています。個人の多様性を活かすためには、組織のコミュニケーションを向上させる必要があります。そうすることでメンバー同士での建設的なディスカッションが増え、組織の変革が起こりやすい土壌が創られます。
2. 組織のビジョンやミッションの浸透
新しい期のスタートや新プロジェクトのキックオフに、チームビルディングを導入するケースも増えています。主な目的は、新しい期の目標や新プロジェクト達成に向けての一体感を醸成すること。そして、組織のビジョンを共有し、組織間で競争するのではなく、協力して目標達成を成し遂げるマインドを創り上げる目的があります。
3. チームのパフォーマンスの向上
チームビルディングの最大の目的は、チームのパフォーマンスを向上させることです。最初にも触れましたように、チームビルディングはメンバーがそれぞれの能力を主体的に発揮しながらも、一丸となって目標達成を目指す組織づくりのことです。そして、そのような組織になることで、チームの課題解決力はアップし、結果として、チームのパフォーマンスを向上させることに繋がっていきます。

チームビルディングはどんな効果をもたらすのか

チームビルディングの過程におけるメンバーの思考や行動、関係性の変容
例えば、研修の中では「困難な課題にチームで立ち向かう」というミッションが与えられます。個人では解決するのが難しい課題でも、チームで意見を出し合い、解決する成功体験を積みます。そのような体験を積むことで、達成感やチームの一体感を醸成することができます。

チームビルディングの行動変容
チームビルディングを実施すると、自ずとチーム間の上下関係や壁が薄くなっているのを感じることができます。また、チームで困難なミッションをクリアし、達成感や一体感を味わった経験から、通常業務に戻ってもその感覚を持ちながらコミュニケーションを取ることができます。チームのメンバーへの信頼感が増し、今まで個人で抱えていた課題もチームの力を借りて解決しようとします。結果的にチーム力が向上し、イノベーションが生まれやすい土壌が形成されます。

チームビルディングに取り組む上での留意点

共通目標ができていない
チーム間で共通の目標ができていないケースがあります。例えば、目標は「売上の向 上」であるのに、あるメンバーはそれを「集客力の向上」だと認識している場合など です。ここでは、手段と目標がすり替わって理解されています。目標の共有時は具体的に、そしてメンバー一人一人が正しく理解しているかどうかを確認する必要があります。
思考や価値観が合っていない
メンバーはそれぞれに思考や価値観を持っていて、それは当たり前のことです。しかし、それを受け入れられない風土があるとメンバー間の衝突や不和が起きてしまいます。メンバーが互いの価値観を理解し合い、多様性を受け入れられる風土を醸成することも経営者やリーダーの役目です。
“暗黙の了解”の認識の相違
チームは、社歴や職歴も様々で価値観の違う人が集まった集団です。その中で、自身が「暗黙の了解」や「ルール」だと思っていることに相違がある場合があります。 チームで共通認識を持っておくべき知識や認識で、かつ、明文化できるものについては、マニュアルや手順書などではっきりと文字にして残しておくことが必要となります。そうすることで、認識の相違をなくすことができます。

チームビルディングの種別

 それでは、チームビルディングにはどのような種類があるのかご紹介しましょう。

体験を共有
チームビルディングにとって、メンバーが共通の体験をすることは非常に有用です。 例えば、社内イベント(ボーリングなどのスポーツ大会や運動会)や社員旅行、チームや部署での親睦会などが挙げられます。これらの経験を共有することにより、メンバーがお互いのことについてもっと知り、よりコミュニケーションが取りやすくなります。

研修や合宿
チームビルディングを目的とした研修や合宿も開催されています。主な内容としては、実際にチームメンバーと課題解決に向けた話し合いを行ったり、ビジネスゲームやスポーツなどを行ったりします。この中でチームは、共に困難な場面に立ち向かったり、失敗も経験します。しかし、そこからメンバー全員で学びを見つけ、一体感を醸成していきます。

継続性のある組織づくり
チームビルディングには、特別なイベントや研修だけではなく、日々のコミュニケー ションも非常に重要です。例えば、チームで定期的にミーティングを開催し、メンバーの進捗や課題などを共有し、意見やアイデアを出し合ったりします。また、日々 の業務も一人で抱え込まず、メンバーとなるべく「会話」して、共に解決する心がけ が大切です。また、リーダーはチームの関係性を良くするためのルール作りなども、継続的に行う必要があります。

上記のチームビルディングの種別で、さらに具体的な内容や実施方法などをお知りになりたい方はご相談頂ければご紹介させて頂きます。

チームビルディングを行うための重要なポイント

1.【共通の目的の明確化】
これから行うことが何のためにするのかが明らかになっている
2.【ゴールの明確化】
目標や達成が全員に、明確に、目に見える形で現れている
3.【役割分担の明確化】
全体の中で一人ひとりが自分の役割をしっかり認識している
4.【プロセスの合意】
行動のプロセスについてメンバーが納得して進めている
5.【メンバーとの共有】
メンバー全員が同じ喜び・同じ悔しさ・同じ反省を共有できる

目的やゴール、役割分担を明確にし、プロセスへの全員の納得があるからこそ、やり遂げたいという達成感がメンバー全員に共有され、組織は強い「良きチーム」となる

チームビルディングにおける合意形成の重要性

人はそれぞれ考えがあります。自身の考えのみに囚われず協議し、他者の意見を取り入れることで、より客観的なアウトプットが可能となります。合意形成を進め、より良い結果を生む流れを学ぶことが重要です。

メンバーと合意形成することで、チーム効果が強化され、活性化につながる

「個」の力を引き出し、「チーム」としての可能性を最大限に発揮するために、チームビルディングの研修をきっかけに自組織の強化を図ってはいかがでしょうか。

文責 株式会社HRラーニング・サーチ 仲本親司