財務省と金融庁は、2019年度予算案の財源として預金保険機構が保有する8千億円程度を国庫に納付する方針を固めました。一部の報道ではこれを埋蔵金と解説されていました。
ところで、「預金保険機構」をご存知ですか。「預金保険機構」とは、預金者等の保護と破綻金融機関に係る資金決済の確保を図るため、預金保険制度を確立し、信用秩序の維持に資することを目的に昭和46年に政府・日本銀行・民間金融機関の出資により設立された金融システムの安全弁です。預金保険は、預金等の残高に料率を乗じた保険料を金融機関により徴収します。「預金保険機構」は、万一金融機関が破綻した場合に預金者の預金債務(元本10百万円までと破綻日までの利息等)をこの保険料を原資として補償します。いわゆるペイオフの実施はこの制度によって支えられています。
平成9年の北海道拓殖銀行を皮切りとした金融危機も平成14年の相互信金と中部銀行の倒産でほぼ終息し、平成23年の日本振興銀行による経営破綻を最後としました。さて、その後も保険料は積み増しされ、経営が悪化した金融機関に投じた公的資金の返済が進み、「金融機能早期健全化勘定」には約1兆60百億円(17年度末時点)の利益剰余金が積み上がりました。一昨年に会計検査院は、「預金保険機構」の利益剰余金が想定されるペイオフ対策資金を大きく上回り、1兆10百億円を国庫納付などを行うよう指摘していました。金融庁も利益剰余金1兆60百億円のうち、80百億円を国庫に納付しても金融システムの安全上問題ないと結論づけてこれを税収外の歳入として組み入れることとなりました。一方で預金保険料率を引き下げて金融機関の負担を少しずつ軽減しています。金融危機から約20年経過して金融システムが安定してきたことを証する事象の一つと言えます。
【写真の解説】バチカンのサン・ピエトロ大聖堂(蔵出し)です。記事の投稿日がクリスマスイブであることから、宗教に係る写真を選択しました。