新型うつ?最近の若者は弱くなったのか

1 労働環境を振り返ってみると

「私たちの時代はもっと強かった。最近の若い人は弱くなったのではないか」という質問を度々、受けます。その答えを考えるには、歴史を参考にすることが有効だと思います。1911年(明治44年)に労働基準法の前身である工場法ができました。その当時の日本は生糸の輸出量が世界一で、それを支えていたのはテレビドラマ「おしん」のような若年労働者です。17時間労働と劣悪な環境での就業を強いられ、肺炎などの病気になる従業員が多く、そういった労働環境を改善すべく、工場法が作られたのです。今から、考えると工場法による取締は日本が先進国の仲間入りをするためには、当然の成り行きでした。ただ、この時も、経営者の団体から工場法の成立には強い反発があったことを覚えておかなければなりません。

2 精神衛生に関する法律

それから100年たった今、労働基準法の一部から分離した労働安全衛生法に精神衛生に関する条項が追加され、法改正されようとしています。現代の仕事やサービスは肉体労働から、頭脳労働に移ってきていますので、その環境を良くするための精神衛生の向上に力点が置かれるようになることは、これもまた、自然な世の中の流れではないでしょうか。「今の若者は弱すぎる。育児があるから残業はできないと言うし、大声で怒鳴ると泣き出す!」と考えることを30年後の私たちは何と思うのでしょうか。

3 新型うつの出現

メンタルヘルスに関わる世の中の必然性は理解していただけたのではないかと思いますが、日々の労務管理の中ではどのようなメンタルへルスの問題が起こっているのでしょうか。従業員に増加している新型うつは、今までのうつとは特徴が違います。従来のうつは、まじめで几帳面、中年が多くなり、自分がうつ病であることを認めたがらず、抑うつ状態が続きます。それに対し、新型うつとは若者に多く、自己中心的で、他人のせいにする傾向があり、休養中に海外旅行をしたり、飲み会に参加したりするなど余暇活動では元気になりますが薬が効きづらいことが特徴です。だからといって、仮病ではなく、心身の不調があり、うつ病で休職することにはあまりためらいはないという特徴があります。

4 新型うつへの対処法

この新型うつに対し、対応が難しいと職場は混乱しています。問題は新型うつは他責的であるということです。会社でハラスメントにあって、自分はうつ病になったから労災申請して欲しい、職場を配置換えして欲しいと言われた場合にどのようにすればいいのでしょう。会社として応じることができないことにはNOという必要があります。20代、30代に多い新型うつに限らず、若者のうつの支援には、自分のキャリアを会社の中でどうしていきたいか、会社の中でどう成長していきたいかに関わらないと、本質的な解決にはなりません。会社としては、誰でもが持つ成長欲求を会社のベクトルに合わせて人材育成していくことが求められています。

文責:Grow社会保険労務士事務所  代表 磯部 和代


ドクターに聞く

身近の内科開業医ドクターにうつに関する情報を聞くことも一つの整理方法です。専門外でも一通りのことはご存知ですよ。勿論、その結果結論が出るものではありませんが、安心材料になるからです。