(1)制度の目的
「相続時精算課税制度」とは、平成15年に導入された親や祖父母の世代から子や孫の世代へ財産の移転を促進させる目的で制定されました。特に、祖父母の世代から孫(20歳以上)への財産の移転は、親の世代が存命であれば法定相続人とならないので、相続税が課されず非常に有効な制度となり得ます。実際の適用に際しては、有利不利の選択がありますので慎重に進める必要があります。
(2)制度の概要
①適用対象者
受贈者は、贈与した年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属である推定相続人または孫に限定されています。贈与者は、贈与した年の1月1日において満60歳以上の父母又は祖父母に限定されます。
②適用対象財産
財産の種類、贈与回数に制限はありません。贈与財産の合計金額が25百万円を超えると贈与税が課されますので、この金額が一つの基準となります。
③贈与税額の計算
贈与財産の価額の合計額から25百万円を控除した金額に20%の税率を乗じた金額です。(暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできません)
④申告義務
相続時精算課税を選択する受贈者(子または孫)は、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に『贈与税申告書』と『相続時精算課税選択届出書』を提出しなければなりません。
⑤申告書の添付資料
贈与者の『戸籍附票』または『住民票』(マイナンバーの記載のあるもの)
受贈者の『戸籍謄本』、『戸籍附票』または『住民票』(マイナンバーの記載のあるもの)。受贈者が孫である場合には、受贈者と贈与者との関係が解る『戸籍謄本』(贈与者と受贈者の親との関係を示すもの)の添付も必要です
⑥暦年課税の禁止
相続時精算課税は、受贈者が贈与者ごとに選択できます。しかし一旦選択すると選択した年以後贈与者が亡くなるまで継続して適用され、暦年課税に変更することはできません。
⑦相続税額の計算
相続時精算課税に係る贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を元に計算した相続税額から既に納めた相続時精算課税に係る贈与税額相当額を控除して算出します。
⑧適用の有利不利判定について
この制度の適用に際しては、現時点で贈与を受けた方が有利であるかの判断と将来の相続税の試算とを併せて行う必要があります。また、毎年の基礎控除110万円の優遇がある暦年贈与を選択する方が有利となるケースも多く、この制度の採否は慎重に行う必要があります。