奈良のリサイクルショップに家族と来ていた小学6年の女の子がトイレに1人で行って行方不明になった。翌日夜無事に発見され、容疑者は逮捕された。ほっとした。しかし私には大きな疑問が残る。
家族はこの女の子をどうして1人でトイレに行かせたのか、と。
自分の娘たちが小さいころから私は「危険だから公園のトイレは使うな」や「日本はもはや安全な国ではない」などと繰り返し言ってきたし、娘がトイレに行く場合は親がついていくか、姉妹の2人組で行かせるかしてきた。それくらい厳重な対応をしてちょうどいいくらい、女の子は犯罪に巻き込まれやすいと私は思っている。
1980(昭和55年)3月、徳島城公園のトイレの個室で22歳の女性が出刃包丁で切りつけられ、引きずり出されてすぐそばの堀に投げ捨てられ、溺死した事件が私の頭にずっとある。この殺人事件は1995(平成7)年3月、容疑者逮捕に至らず公訴時効を迎えた。
当時高校生だった私が初めて「公衆便所は安全ではないのか!」と驚いた事件だ。女の子がトイレで連れ去られそうになった事案はほかにも報道されてきた。新聞やテレビのニュースは、世の中に潜む危険について具体的に教えてくれる。その情報を知っておくことは予防につながる。
東京で小学2年の男の子がドラム式洗濯乾燥機に閉じ込められて死亡した最近の事故も知っておくべきだろう。子供が自分で中に入ることができたり、中からふたが開かないので脱出できない構造だったりする洗濯乾燥機があるのだ。
そういえば私は小学1年のころ母から「冷蔵庫が捨ててあっても中に入ったらあかんのでよ。中からドアが開かんけん、死んでしまうんでよ」と言われたことを今でも覚えている。当時そんな痛ましい事故があったらしい。
私が自分の子供たちに世の中に潜むいろいろな危険性について伝えてきたのは、母親から受け継いだDNAのせいかもしれない。
親の意識と言葉が子供を危険から遠ざける。その危険を知る手段としてニュースほど分かりやすいものはない。
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(文責:元毎日新聞記者 西野浩史)