「労働安全衛生法の一部を改正する法律(通称:ストレスチェック義務化)が2015年12月1日より施行され、メンタルヘルス対策の充実・強化を目 的として、従業員50人以上の全ての事業所にストレスチェックが義務付けられました。しかし、多くの企業では、ストレスチェック実施後の対応に明確な方針 を打ち出せない状況にあります。今回は、このストレスチェック義務の解説とその対策についてご紹介します。。

ストレスチェックとは

今回の「労働安全衛生法」の改正で、メンタルヘルス対策の強化ポイントは3つあります。

 1.  50名以上の事業所について全従業員へのストレスチェックの実施
 2.  高ストレス状態かつ申出を行なった従業員への医師面談
 3.  医師面接後、医師の意見を聴いた上で必要に応じた就業上の措置

なお、行政への報告として、会社はストレスチェックや面接指導の実施状況として以下の4点を1年に1回、労働基準監督署に報告しなくてはなりません。
  
 ⑴ ストレスチェックの実施時期
 ⑵ ストレスチェックの対象人数
 ⑶ ストレスチェックの受検人数
 ⑷ 面接指導の実施人数

また、出来るだけ実施することが望ましい努力義務として、ストレスチェックの集団分析及びその結果を踏まえた職場環境改善が定められています。

ストレスチェック義務化に関する調査結果

出典:「ストレスチェック義務化対応に関するアンケート調査結果(エン・ジャパン 2015年8月実施)

Q1. 2015年12月から施行される「ストレスチェック義務化」についてご存知ですか?

70%以上は認知されていますが、その内の85%が「大まかに…」という回答です。施行後の第一歩は「ストレスチェック義務化」の理解を深めていくことです。そうすることで、自社の現状を把握し、メンタルヘルス対策のための準備を進めていくことができます。

160113_1Q2. 貴社では、「ストレスチェック義務化への対応(準備)を進めていますか?

「ス トレスチェック義務化」について”知っている”と回答していますが、一方で63%の会社は準備や具体的な取り組みができていません。これは、もしかする と、どのように準備をしたら良いか、その手立てがよく分からないのかもしれません。また、取り組むにあたり、Q3の質問の回答にあるように困難や懸念を感 じていることも準備の遅延の要因となっていると思われます。

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Q3. ストレスチェック義務化に対する上で、困難や懸念を感じる点は何ですか?(複数回答可)

「ストレスチェックを行う体制、相談窓口の構築」が約6割と一番の懸念される点がストレスチェックおよびフィードバックの仕組みの構築となっています。まだ施行直後ということもありますが、これからの体制づくりが大切となります。

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Q4. ストレスチェックを義務化することで、何が起こると思いますか?(複数回答可)

「ス トレスがあると判定された社員への過剰な配慮」が45%と最も高いですが、こちらは経験値が増えてくると少しずつ解消されてくるのでは、と考えます。むし ろ、3番目に高い「形だけ実施するのみにとどまり、効果はない」と回答された項目が最も懸念される部分ではないでしょうか。しかし、今回の法改正の目的 は、現代社会の大きな問題の一つとなっているストレスによる体調不良や精神疾患の未然防止や解消です。このストレスチェック義務化対応によって左図の項目 のうち、6項目(⭐︎印)の良い効果をもたらすことができるよう準備し、体制を整え、取り組んでいくことが重要と考えます。

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 ストレスチェック義務化対応の流れとその課題

従 業員がストレスチェックを受検します。その結果、高ストレス者と判定が出ると、本人の申し出があれば医師や保健師との面談を行うことができます。そして、 高ストレス者と医師や保健師などの医療従事者との面談の中で必要に応じてアドバイスや指導を行われ、会社側(人事部)へは就業上の措置等に対する意見が フィードバックされます。そして、会社はこれらの実施報告を年に1回、実施状況を労働基準監督署へ報告することが義務付けられています。

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ストレスチェック対策とは

こ こで、先ほど挙げた課題の中から「職場環境改善への取り組み」と「ストレスチェック後のフォローアップ体制」の一例をご紹介致します。ストレスチェック対 策には大きく分けて2つが考えられます。下図を参考に見ていきましょう。下図にある「事象」を境にして前を「未然防止」、後を「対応」とします。

【未然防止】
高ストレス者を出さない職場環境づくりに全社員で心がけていく必要があります。そのためにも、普段から職場での円滑なコミュニケーションを図ったり、コーチングなどの研修を受講することで個々のニーズに応じた育成や指導、支援を行っていくことが大切となります。

【事  象】
ストレスチェックのみならず、ストレスによる体調不良(心と体)となった社員へ適宜適切な対応を速やかに行います。

【対  応】
医 師や保健師などの指導により、会社として必要な支援を行います。海外では「マインドフルネス瞑想法」等のメンタルケアプログラムを、google、 Nike、インテルなどの企業でも導入を行なっており、ヨガや瞑想法、Zen (禅)などが自律神経を整えるのに効果的であるとハーバード大学やカリフォ ルニア大学などからエビデンスも出されています。

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文責 株式会社HRラーニング・サーチ 仲本親司