今回は、営業に求められる基本的な能力と、その具体的な行動を3つの観点から観ていきます。その3つとは、「ビジネスコンサルタント」、「戦略的コーディネーター」、そして、「長期にわたるパートナー」の観点です。

ビジネスコンサルタント」として求められる3つの基本能力と具体的な行動

基本能力

1.自社の商品やサービス以上の知識   

– 自社の商品知識以上に、お客様のビジネスに関する知識を持って商談に臨む必要がある。

Ex)お客様の抱える課題の全体像と収益状況を理解する

2.共感以上のコミュニケーション・スキル   

-「効果的な質問」「傾聴」「理解の能力」「自分自身を明確に表現する能力」

3.積極的な思考を超える姿勢

– 誠実な対応   

– お客様のビジネスの成功を心から願う姿勢

– お客様の立場に立って考え、抱えている課題をお客様とともに解決していくスタンス

具体的な行動

1.お客様の事業や経営に関する広範囲な情報を把握する

– さまざまな情報網(新聞・雑誌・定期刊行物・業界紙・年次報告書・Internet)を活用し、お客様に関する情報を入手する。   

– 洞察力のある質問をし、お客様の企業戦略、部門戦略から個人のニーズまで、あらゆるレベルの情報を直接収集する。

2.お客様の課題とその背景や理由を明確に把握する   

– お客様の中で起きている事象や事実を把握する。   

– 担当者やキーパーソンが捉えている問題や課題を収集する。   

– 収集した情報をもとに、お客様の課題について自分なりの仮説を構築する。   

– 仮説が現実的であるかどうかお客様に確認して検証する。

3.お客様の競合や顧客について積極的な情報を収集する   

-「お客様の顧客」「お客様の競合」をお客様の視点で見ながら、さまざまな情報源を活用して情報を集める

– 調べた情報をもとに、お客様からさらに情報を収集する。

4.業界の動きや自社の総合力(企業戦略、強み・弱みなど)について最新情報を提供する   

– お客様のご要望を念頭に、自社の商品やサービスなどのソリューション、グループなどのネットワーク、業界他社情報、今後の商品戦略、マーケティング戦略など、会社や業界の動きを日頃から注意深く見ておく。

5.自社の総合力を活かした課題解決の提案を行う  

– セールスに成功した社内の事例をこまめに確認し、提案の幅を広げる。

6.お客様の関心をひきつけられるインストラクションを行う

– 商談する相手、一人ひとりの課題に細かく対応したインストラクションを組み立てる。

7.単に商品を提供するだけでなく、お客様にとって頼りになる相談相手として関わる  

– お客様が何気なく言ったことを敏感に捉え、関連情報をある程度準備する。次にお客様と話すときには、自分 からその話を持ち出して用意した情報を提供する。  

– お客様と同様の課題を抱えていた別の企業がどのように解決したか、その情報をもとに課題解決のヒントを 提供する。

戦略的コーディネーター」として求められる5つの基本能力と具体的な行動

基本能力

1.自社に関する知識   

– 総力をあげてお客様の期待に応えるには、自社のコア・コンピタンスは何か、ビジネス・パートナーは誰でどのようなサポートが得られるかなど、まず自社のことを十分知っておかなければならない。自社のミッショ ン、マーケット、商品・サービス、競合他社をはじめ、所属部門の方針や、他部門の活動や意思決定者につい て、総合的に理解しておかなければならない。

2.チームの編成および運営のための専門的知識   

– 必要に応じて自社内の協力を仰ぐために、営業担当者は社内の人脈を把握し、専門家や同僚、支援スタッフと 協力関係を維持しておかなければならない。同時に、チーム内の効果的なコミュニケーション能力も必要とな る。

3.プライオリティづけと活動内容の管理能力   

– チーム営業では、各メンバーがそれぞれの役割を果たし、活動も多岐にわたるため、個々の活動に優先順位を つけて適切な時間配分をする必要がある。共通の最終目標は一つだが、現実的な活動目標を決め、その実現 に向けて短期目標を設定することも大切である。   

– 活動の進捗状況を把握し、何らかの問題が起きてもすぐに対応可能な具体的な計画を立てることが求められ る。

4.効率性を追求する能力   

– 営業担当者は、活動時間の多くを移動時間や事務作業、その他の雑務にとられている。 しかし、戦略的コーディネーターは、活動時間のできるだけ多くをお客様に割き、その期待に応えることが求 められる。したがって、ITを存分に活用し、効率的に時間を活用する能力は不可欠である。

5.柔軟性   

– 実際に計画を進めていくと、標準化したプロセスに基づいていてもトラブルや予期せぬ状況に遭遇することが ある。そうしたとき、戦略的コーディネーターは状況に柔軟に対処することが求められる。必要に応じて、優先 順位に変更や責任分担の調整を要領よくこなさなければならない。目指すべき目標は、計画どおりに活動を進め ることではない。あくまでもお客様の要望に応えることなのである。

具体的な行動

1.社内の各部門との連携を図って対応する   

– 自分の所属部門および他部門の方針やケーパビリティ、またそれらの部門で起きている最新の状況に精通する。  

– お客様と効果的に話を進められる人がどこにおり、その人の協力を得るにはどうすればよいかをテーマ別に把握 する。   

– 日頃から上司、同僚、支援スタッフと協力することを心がけ、コミュニケーションを大切にする。   

– 他部門を巻き込むことが予想されるときには、関連する人たちに早めに情報を伝えて、お客様の状況を説明して おく。

2.営業部門以外の関連部署にもお客様の要望を正確に伝える   

– 関連部署に、お客様の状況や課題、自社に対する期待などを正確に伝え、全員が同レベルでお客様に対応できる ようにする。

3.お客様の要望に対して自社が適切な対応をしているかチェックする     

– お客様に関わっているメンバーに進捗状況を随時確認し、トラブルを未然に防ぐ。   

– お客様と進捗状況を定期的に確認し、不都合がないかどうかチェックする。

4.お客様がどのようなプロセスで商談について意思決定するかを把握する      

– お客様側の意思決定者が誰か、また意思決定者に誰がどのうように影響を与えるかについて情報収集する。

5.お客様の社内調整を積極的に支援する   

– 提案を進めるためにお客様の社内会議を企画する。   

– お客様のキーパーソンとのリレーション構築のために、上席者とよく相談し、部長や担当役員に同行してもらう 機会をつくる。

– お客様の担当者が社内承認を得るための資料作成に協力する。   

– お客様の担当者が社内で評価されるよう支援する。

6.社内の他部門との連携を図る   

– お客様が営業以外のどの部署に連絡しても満足して頂けるよう、常にアップデートした最新のお客様情報を適宜、 関係部署に伝えておく。

「長期にわたるパートナー」として求められる6つの基本能力と具体的な行動

基本能力

1.個人的な信頼関係を構築する能力   

– 企業対企業の関係の第一歩は、お客様の担当者と営業担当者の関係である。まずは担当者の信頼を得る能力に磨きをかける必要がある。

2.自社の良いイメージを作り出し、それを維持する能力   

– 商品・サービスをはじめとする自社の強みや特徴を確実に把握し、新しい情報をタイムリーに提供しながら常に自社のイメージアップに努力する。

3.自社に対する理解を促進する能力   

– お客様の自社に対する評価について常に確認し、その意見に耳を傾ける。そのうえで自信を持って当社をアピールし、パートナーとしてお互いに尊重し合える関係を構築する。

4.長期的なお客様の関心事に興味を持てる能力   

– 当面の営業活動にメリットがないことでも、お客様が関心を持っていることには、長期的な視点で耳を傾け たい。それは将来のビジネスに役立つことかもしれない。

5.お客様の社内ニーズを満たすための支援能力   

– お客様内で、担当者が立場を安定させ、評価を得られるように、情報提供やアドバイスなどで彼らのビジネスを社外からサポートする。

6.約束を確実に実行する能力   

– お客様との間で取り決めたことや請け負った事柄など、約束したことは確実に守る。これは信頼関係の構築 においては必要不可欠な条件である。

具体的な行動

1.お客様との約束を守り、誠実で信頼のおける態度で接する   

– 機密情報を厳守する。

– 担当者との間に、個人としての信頼関係を築く。   

– お客様が気にかけている点に対して、誠意をもって応える。

2.新しい知識や方法を取り入れ、お客様と接する際に活用する   

– 自社で起こっている新しい動きを伝える。   

– 自分の営業方法を積極的に改善する。   

– 自分の営業力向上のために積極的に自己啓発に取り組む。

3.売上にすぐにつながらないようなお客様の質問や要望にも積極的に応える   

– お客様の重要な関心事については、誠意をもって応える。

4.長期的な視点に立った解決策を提案する   

– 自社の短期的な利益を優先させるような提案は避ける。


 お客様との信頼関係を構築していくための活動ステップは、下図のように4つのステップに分けられます。 第1ステップは、「信頼関係の基盤づくり」です。ここでは、B2Bの前にひとりの営業担当者として印象が大切です。そのためにも商品知識や自社のサービスに関することだけでなく、業界全体の動向や様々な情報に精通しておく必要があります。そして、自分が営業として価値ある情報を常に提供できる人間であることを知っていただくことが「信頼関係づくり」の第一歩となります。そして、顧客のビジネス全体像を理解することに努めます。  

次にくるのは、「信頼関係の構築」です。第1ステップで顧客や顧客の取り巻く環境を理解し、顧客の課題を抽出して仮説を立てます。この顧客の抱える課題は、営業から捉えると”ビジネス機会の抽出”となります。仮説の検証を顧客と共に行い、解決に向けて協働することの合意を得ていきます。  

第3のステップは「信頼関係の強化」で、自社の商品やサービスから顧客の課題にどんな解決策が提案できるか検討を行います。そのうえで創造的かつ複合的な解決策を提案することができれば、信頼関係は強まっていくことができます。       

そして、最後のステップが「長期的な信頼関係の構築」です。ここで重要なのは中長期的な戦略シナリオを立てていくことです。社内外のリソースをフルに活用し、組織をあげて顧客とのパートナーシップを確立に向けてシナリオを実行していきます。

文責 株式会社HRラーニング・サーチ 仲本親司