コロナ禍における営業の転換

2021年1月7日、再び、緊急事態宣言が発令されました。その緊急事態宣言は今から丁度、9ヶ月前の2020年4月7日に初めて出され、私たちは新型コロナウィルスと共存する生活が当たり前になりつつあります。また、コロナ禍を経て、生活様式だけでなく、仕事の価値観やあり方も大きく変化しています。特に「営業」は昨年の4月が分岐点となりました。「働き方改革」が叫ばれていましたが、この”緊急事態宣言”によってステイホーム期間中、半ば強制的にリモートワークが開始され、営業会議はZoomなどのオンライン会議へ、対面による商談もオンライン商談ヘと移行せざるを得なくなりました。今回は、私自身、オンラインによる商談や研修、e-learningによる動画配信などの経験からこのコロナ禍にあってどのように「営業」をオンラインへ適応化させていくかを解説していきます。

マーケティング(新規顧客獲得)の主戦場の移行

新規の顧客を獲得するため、これまでは展示会や セミナーなどが開催出来ていたのが、コロナショック以降、これらの 手法は壊滅的な状況となりました。そうした中で、得意・不得意に関係なく、マーケティング(新規顧客獲得)の主戦場は対面から非対面、すなわち、オンラインに移行せざるを得ない状況になりました。そこで、このコロナショックをきっかけにウェビナー(オンライン上で開催されるセミナー)や、既存のWeb広告が台頭してきました。しかし、企業の業態や商材によっては必ずしもオンラインだけのマーケティングでは難しいと思われます。企業内研修の講師をしています私自身、研修やセミナーはご存知のように完全な”3密”状態となってしまい、昨年はほとんど実施できませんでした。しかし、少しずつですが、オンライン研修を導入し、対面研修からシフトするようになり、新たなクライアントの獲得を始めています。

オンライン商談では「浅く広い」コンタクトに心がけ

営業の変化による具体的な課題は「オンライン商談」の効果的な運営ではないでしょうか。オンライン商談の増加により、これからはこれまでのようなじっくりと深い人間関係を築いていく営業スタイルと違ってオンラインならでのコミュニケーションが必要となります。
特に、市場そのものが冷え込み、従来の展示会やセミナーなどからの新規顧客が期待できないことに加え、オンライン商談に慣れていないことによる受注率の減少など、営業現場を取り巻く環境は厳しいものになっています。だからこそ、オンラインでの商談の際、お客様と短い時間でコンタクトの回数を増やし、「浅く広い」コンタクトでコミュニケーションに心がけると良いでしょう。

どうやってオンラインで人間関係を構築していくのか

コミュニケーションがオフライン主体からオンライン主体に変わるということは、それに連動して営業スタイルも変わるということになります。現在、営業がうまくいっていない人やチーム、企業はこれまでのような対面での営業スタイルの延長戦上でオンライン商談を捉えているのではないでしょうか。何を隠そう私も当初、これまでの研修のやり方を引きずってオンライン研修の運営を試みましたが、思うような研修運営ができませんでした。そこで、先に記載したような「浅く広い」研修、つまり、1日コースの研修を30分から50分くらいの短時間の内容に分割し、5回くらいのコースにしてオンライン研修やe-learningの動画配信で実施するようにしました。実際の研修効果はまだこれからですが、少なくとも企業の研修担当者からは新しい人材開発スタイルとして認知されつつあります。

対面営業のコミュニケーションでは、より「深く」深耕できるのがメリットですが、お客様や取引先までの移動時間などで商談以外の時間が必要となります。一方で、オンライン商談では、「浅く広い」コミュニケーションとなります。これは決してデメリットではなく、「深く」話せない分、お客様とのコンタクトを増やすことで接点を増やし、人間関係を構築する思考にシフトチェンジすることが重要です。

オンライン商談は、浅く広く効率的にたくさんの人に会うことができます。また、気軽に会える分、1社ごとの商談や打合せ回数を対面以上に増やすことが出来ますので発想の転換でデメリットをメリットとして捉えることが出来ます。新しい生活様式のもとで営業活動をオンラインとオフラインの双方の利点をうまく組み合わせた”ハイブリッド型”な商談が展開できます。

オンライン商談の事例

オンライン商談は1回の商談時間を短くしてコンタクト回数を増やす、以下のようなオンライン主体の商談スタイルを参考にしてみてください。

コロナ禍以前の対面商談では1回1時間の商談を、オンライン上で30分で2回に分けて実施します。
手順は以下の通りです。
まず、事前にオンライン商談の主旨・目的を伝えるために事前資料をメールで送る。

  1. この中には潜在的ニーズを喚起するため、あるいは、顕在的なニーズの再認識して頂くための情報提供も入れておく。
  2. これまで1時間の商談で提供してきた内容を分割する。1回目のオンライン商談では情報提供をすることでお客様のニーズを喚起し、顕在化された問題や課題をヒアリングを行い、情報収集を行う。
  3. 情報集した内容から問題を整理し、課題を明確にする。そして、解決策を考え、提案書と見積書を作成し、メールで送る。
  4. 2回目のオンライン商談でこの提案書のプレゼンテーションを行う。

上記の1)から4)をスピード感を持って効果的に行います。例えば、午前中にヒアリングを目的とした1回目のオンライン商談を行い、2回目のオンライン商談をその日の夕方にセッティングします。そして、夕方までにヒアリングした内容から提案書と見積書を作成し、夕方の2回目の商談のプレゼンテーションに臨みます。このようにすることで、対面営業以上にスピーディで高い質の提案が実現できます。しかも、お客様の判断も早くなるものと思われます。

商談におけるオンラインとオフラインのコミュニケーションの違いを理解し、それらを使い分け、あるいは、組合わせることでお客様に合わせた最適な営業スタイルでお客様との関係構築していくことが大切になります。これまでの営業スタイルに固執せず、新しい環境に応じた柔軟な営業の取り組みが求められていきます。

文責 株式会社HRラーニング・サーチ 仲本親司