先週のトヨタの株主総会で個人投資家向けの新しい種類株式の発行が承認されました。外国人投資家の反対によって否決されるかと不安視していましたが、安定株主確保の一つの選択肢が確保されたことは喜ばしいと思います。

(1)AA型種類株式の7つの特徴
この株式は、長期保有の安定株主を確保するために設計されたものです。
①購入後5年間は売却できません。
②5年経過後に購入時の価格でトヨタが買い取ってくれます。(株式でも値下がりリスクがありません)
③5年度以降は、トヨタ自動車の普通株式に転換する選択肢もあります。
④配当は1年目0.5%、2年目1.0%、3年目1.5%、4年目2.0%、5年目2.5%と予め定められて います。
⑤相続が生じた場合には、通常の株式と同様に名義変更することはできます。
⑥非上場株式であるため、NISAでは購入できません
販売は野村證券だけで行われます。
 価格は7月2日から7日までのいずれかで決定され、申込期間 は7月22日までです。野村證券に口 座がない場合には、まず口座開設してから申込となります。

(2)どのようなタイプの投資家に向くのか
配当狙いであれば、現在の配当率が既に2.5%ですので普通株式を購入した方が良いでしょう。定期預金もしくは個人向け国債のみに預けている方は安定志向が強いので、実質的に価格補償されているこのタイプの株式はリスクもなく安心して投資できるでしょう。

(3)税金面で注意すべき事項はないか
トヨタの株式ですが、『非上場株式』である点がこれまでの株式とは大きく異なります。年間配当が10万円を超える場合には確定申告が必要で、さらに他の所得と合算する総合課税となります。従って、不動産所得や他の所得のため確定申告を要する方は、税負担を考えますと投資額を10百万円以下に抑えるか、ご家族が代わって投資されることをお奨めします。

(4)元企業人としてこの新型株式をどのように評価するか
約30年前に勤務していたカシオ計算機も当時は長期保有を前提とした個人投資家(=安定株主)が少なく、経営企画部の株式担当者は日々の株価の動向もさることながら、高い配当性向を維持するだけではなく、いかに長期保有の個人投資家を確保するかで頭を悩ませていました。
意外にもトヨタは個人投資家の比率が10%台と上場企業の平均値(約20%)を大きく下回っております。製造業は、新技術の研究や新製品の開発で莫大な費用を投下せざるを得ませんが、経営が安定していなければ積極的な投資も株主から否決される可能性もあります。
その意味では、この元本補償型株式は他社にも波及する可能性が高いでしょう。

(5)元金融マンとしてどのように映ったか
金融商品の設計は、高度な専門知識を必要とします。今回の商品は、証券会社でなければ設計できなかったといえます。その意味で、商品開発した野村証券だけが取扱うこととなったのは当然です。“さすが野村”というのが最初の感想でした。

トヨタ新型株式