報道を解釈するとは?

エジプト情勢は混乱を極めておりますが、恐らくはこのようなトップニュースについては、お客様などとの会話にのぼることもあろうかと思います。「エジプト大変ですね~」と他人事のように返すと、せっかく投げられた相手(見込み客や取引先)とのキャッチボールを返すことなく、会話は終わります。必ずご自身の考えを“それなり”に持つべきで、無駄な時間にしないことが肝要です。
ポイントとなるのは、今後の展開予測を意見としていれることであり、新聞記事の読み上げでは全く意味がありません。相手が聞きたい内容は、自分と同調する意見に加えて相手が何を考えているかを知りたいのです。新聞内容など誰が見てもわかるのですから。あくまでも意見ですから答えなどありません。
例えば、
①    クリントン国務長官でさえ、エジプトは改革の必要があり、さらにオバマ大統領は退陣要求ともとれる発言に既に変じている。
②    イスラム同胞団(聞きなれない造語でしょう)という組織が今回のエジプト問題では暗躍している。
③    さて、ムバラク政権が倒れた場合、いったいどうなるのか。

地政学的に見ればエジプトからトルコへ

この③についての意見を持つことが重要です。例えば、なぜ全世界でのトップニュースになっているかを考える必要があります。簡単にいいますと、イスラエルを取り巻く環境に変化が起きるからです。以前、オバマ大統領が中東地区歴訪の際、真っ先に向かった先がトルコだったことでかなり話題になったことを思い起こしてください。
イスラエルとアラブ社会で最大の友好関係にあるエジプトが、反イスラエルにならないとも限らない出来事だという認識が必要です。少なくとも、ムバラク政権が倒れた場合には今までのような親イスラエル体制ではなくなることは必至です。すると、エジプトは地政学的にも今後数年間は混乱期を迎え、軍部が主体的に動く内政優先国家にならないとも限らない。
ここで、勃興してくるのが、徹頭徹尾反イスラエル国家であるイランであり、必然的に世俗主義のトルコがアメリカの最大同盟国となるでしょう。
中東はバランスが崩れるので、諸処、危険な状況になるでしょう。国民の隅々まで石油による利益が行き届いているサウジアラビア、ドバイは別としても、エジプトと地理的にも近いアルジェリアなどに飛び火すればアラブ社会の均衡は崩れるかもしれません。   

(金子 丈次郎)                                              
● 金子丈次郎氏の略歴 
国内大手証券、米国新聞社、米国資産運用会社、米国ヘッジファンド会社に勤務。現在は一投資家であると同時に、セミナー講師や各種コンサルタントとして活躍中。