ギリシャの財政問題が発覚してすでに1年が経ちました。ドルに代わる基軸通貨として注目を浴びたユーロは昔の話。今や欧州は悪材料の宝庫となっています。新聞報道で翻弄されている方も少なからずいらっしゃるでしょう。各国の経済格差、財務内容の優劣格差から、今更のように単一通貨ユーロの誕生そのものを訝しがるエコノミストもいますが、もはやナンセンスでしょう。

新ユーロ危機の到来

さて、この1年の間ユーロは昨年夏から“IMFの融資”、“ドイツの支援”など各国協調による救済策により、一瞬立ち直るかのように言われてきましたが、(実際に、一旦はギリシャ問題は吹き飛び、ユーロは一気に上昇してきました)が、またここへきてポルトガルの格下げで、大きな問題が再燃しつつあります。ギリシャ問題はある意味まったく解決の目途がたっていないのです。話は前後しますが、欧州危機懸念が緩和された頃、ギリシャ問題から世界の投資マネーの注目度は米国経済に移り、今度は金融緩和政策の継続か否かで、また大きく株式・債券・通貨が動き始めました。

過剰流動性の影響

大量に刷られたドルが向かった先はコモディティであり、新興国への投資です。従ってドルが刷られなくなれば、「コモディティや新興国への投資にうまみがなくなる」と、一気に資金を引き揚げた投資家もいるようです。でまた上がってきましたね。(笑)
基軸通貨である米ドルはかつて「有事のドル」と言われたものでしたが、今や普通の通貨と何ら変わりなく、どこかで大惨事が起きても逃避資金がドルに集まるような時代ではなくなりました。

非常識が決める世の中

数年前では当たり前の事が今や非常識であり、またその逆も真なり。ゆく川の流れは絶えずして・・・。世の中に同じような事例は多いとしても、何一つとして同じ対応で乗り切れるものはないと水に例えて解釈していたのははるか昔の話でした。「起こりうるはずないものが起こる」のが今の時代です。物事の解釈で常識的な見地から判断することは大人としては必然ですが、絶対ではありえません。ここが今の経営の難しいところでしょう。こと、投資運用の世界で考えれば、過去の実績の積み上げや、先人たちの教えなどから分析結果をはじくのが常ですが、考えてみますと、世の中の動きを決めてきたのは、突発的に起きた、“バブル崩壊”、“911テロ”、“リーマンショック”、“震災”、“原発”、“欧州危機”、と予想だにしない出来事です。ベル型カーブでいうところの平均値から遠いところで、世の中の動きが決まっているのです。次は何がいいのか、何が起こるのか、という視点ではなく、何事も起こるという意識は持っていて損はありません。

(金子 丈次郎)