冬の味覚の代表格であるフグは、和食以外では使われない食材です。先人たちの弛まぬ努力により安心して食する技術が確立され、調理後の廃材の徹底した管理により安全性が確保され、フグ食文化が構築されました。繊細で勤勉な日本人の努力の賜物といえます。
さて、フグ食の歴史を紐解くと、縄文時代の貝塚から多数のフグの骨が発掘されています。このことからフグは大昔から食べられていたことが解ります。中国の秦時代の『山海経』に「フグを食べると命を落とす」という記述があり、日本以外ではフグ毒を克服するよりこれを避けた結果、フグ食の文化が深まることはありませんでした。
ご存知のように全国の8割が下関の南風泊市場に集中します。下関にフグ専門市場ができた理由はいくつかの必然によります。江戸時代には幕府による「ふぐ食禁止令」が出され、特に長州藩ではフグがたくさん獲れることもあって中毒死した場合には家禄没収、家名断絶の厳しい処分が科されました。一方、庶民の間ではフグが隠れて食べられていたのも事実です。このフグ食禁止令を解いたのは、山口県出身の初代総理大臣伊藤博文です。伊藤博文が頻繁に出入りしていた下関の老舗旅館春帆楼をふぐ料理公許第1号に指定しました。このような歴史的な背景に加えて、玄界灘や日本海という良好な漁場に近く豊富な天然ふぐが流通しやすいこと、下関が本州の西端で商業の中心地にあり人々が集まることがふぐの食文化を全国に伝える発信地となったことです。今では専門市場が近くにあることから九州ではフグの養殖も盛んになっています。
天然フグの水揚げ量が最も多いのは都道府県で見ると石川県が1位で能登半島が主たる漁場となります。愛知県の知多半島のフグは遠州灘の急流に育まれ延縄漁で傷付かないよう大事に扱われています、伊勢志摩のフグは伊勢神宮に奉納される良質なトラフグが獲れます。首都圏では逗子小坪漁港や横須賀佐島漁港などで揚がります。天然フグは3月下旬から7月までは産卵期となり毒性が高くなりますので、9月以降にこれらフグの名産地で舌鼓を打ってみてください。
屋 号:岩亀
住 所:横浜市西区戸部町5-177
営業時間:17時半〜22時半
電話番号:045-231-7683
定休日:日曜・祝日
《ふぐコースの献立》美味しさを感じていただくため、大将にご回答いただいたメッセージをそのままお伝えします。