vol.14 4つのタイプ別女性社員の褒め方・叱り方
「女性社員は扱いにくい」「女性社員を叱れない」など管理職研修の場で時々耳にします。今回は、コミュニケーションスキル研修で用いられている「4つの行動タイプ」の手法を活用して、効果的な「褒め方・叱り方」をご紹介します。4つの行動タイプとは、1.達成型 2.熱情型 3.友好型 4.安全型 です。この4つに女性特有の「らしさ」が加わって、女性の性格は形づくられているわけです。もちろん、この手法は女性に限定したものでなく、男性社員も含めた会社でも家庭でも活用できる手法です。
■■女性に共通する「褒め方・叱り方」
1. 褒め方
他人を褒める際の着眼点は、①結果承認 ②事実承認 ③存在承認 の3つです。
例えば、最終結果を達成したときに、「よくやり遂げた!」と褒めるのが結果承認。「この資料、分かりやすくなったね」などど、結果にかかわらず、その「事実」を言葉にするのが事実承認。存在承認は、「あなたがいてくれて助かる」と相手の存在そのものを認める言葉がけです。男性上司の多くは結果承認で事足れりとしていますが、タイプにかかわらず、多くの女性が最も求めているのは存在承認。存在承認されると、「この人のために頑張ろうと」と思うのが女心、母性です。そんな気持ちにさせてあげることが出来たらベストです。
2. 叱り方
叱り方で注意すべき点は、女性は相手の表情や語気などから相手の感情を敏感に察する能力が高いということです。男性もそれを知っているからこそ、「女性を叱れない」と悩んでいる人もいます。”怒鳴る”と”叱る”を勘違いしている男性上司が多いと思われます。怒鳴ってしまうことで、多くの女性は萎縮し、高圧的・威圧的な叱り方は「パワハラ」と受け取られかねないので注意が必要です。
では、怒鳴らずに叱るためにはどうすれば良いでしょうか。その方法は、起こった事実を伝えて「反省してほしい」と伝えればよいのです。また、「何で出来ないんだ!」という詰問するのではなく、「どうすれば出来たのか?」と質問すると良いでしょう。叱るという行為は、同じ失敗を繰り返させないためのコミュニケーションです。その叱る手順は次の4つの質問を投げかけて相手に考えてもらうことが、失敗から学ぶ指導方法です。
① 何が起きたのか
② 本当はどうしたかったのか
③ 失敗の原因はどこにあるのか
④ この失敗を次にどう生かすのか
こうした褒め方・叱り方の基本を理解した上で、次の4つの行動タイプの性格に合わせたより具体的な褒め方・叱り方を学んでいきましょう。
■■あなたの周りの女性社員はどのタイプ?
次の項目に当てはまる項目✅が一番多かったのが、その女性の行動タイプです。
■■達成型:仕事でキャリアアップは当然の「姉御肌」
▶褒め方
男性女性かはあまり関係ない、「結果承認」を求める
目標はや使命感を持って仕事に取り組んでいるタイプなので、「結果承認」が最適。単刀直入に、具体的な成果を褒めると効果的。また、他人から期待されることに喜びを感じるので、期待感を表明してあげるとモチベーションも高まる。
効果的なセリフ
期待以上の結果だよ。
これからもその調子で頼むよ!
▶叱り方
きつめに叱っても平気なタイプ。ただし、叱った後、期待感も添える。
打たれ強いメンタルの持ち主なので、基本的には男性社員と同じように叱っても大丈夫。男性と同じと言っても「バカヤロー!」などなど野卑な言葉遣いはダメ。叱った後に「本来のアナタなら出来るはず」と期待感を添えてあげると効果的。
効果的なセリフ
こんなミスをするなんて、あなたらしくないな。
■■熱情型:仕事は楽しく自由にやりたい「ムードメーカー」
▶褒め方
とにかく褒めて気分良く。
理屈よりも感覚的な言葉が効果的
仕事は楽しく自由に、ノリのいい仲間と一緒にエンジョイしたいタイプ。「やるね〜」「さすがだね〜」とノリのいい感覚的(抽象的)な言葉をかけて、褒めるのが効果的。褒められる(おだてられる)と、おだてられていると分かっていても、自らモチベーションに点火して動ける。褒められるとどんどん気持ちが乗ってきて、持ち前の創造力と行動力がフル回転し始める。褒められると伸びるタイプの典型。
効果的なセリフ
いいねえ、さすが!その勢いでガンガンやってよ。
▶叱り方
ミスをつつくのではなく、改善点を要望として伝える
楽しさ重視の性格なので、ネガティブなメッセージが嫌い。あっけらかんとして見えるので、気配りを忘れてしまいがち。普段のノリで「何やってんだ!」などと叱ってしまうと、とたんにへそを曲げてしまう。「褒め方」と違って、感情的、感覚的に叱るのではなく、起きてしまったことをあれこれ言わず、具体的な改善策や解決方法を示してあげると良い。
効果的なセリフ
こうすれば、もっとうまくったんじゃないかなあ。
■■友好型:気配りと優しさで周囲を支える「良妻賢母」
▶褒め方
感謝と労いの言葉をかけて
まめに「事実&存在承認」を
4つのタイプの女性の中で最も強く「事実&存在承認」を求めるのが友好型。一般事務や派遣社員、家庭の専業主婦の多くはこのタイプに含まれる。仕事はできるが、ミスをしたときにだけ叱られると落ち込むので、いつも感謝や労いの言葉をかけてあげると効果的。日常のコミュニケーションからまめに「ありがとう」「助かるよ」と声をかけてあげるように。
効果的なセリフ
いつもありがとう。あなたがいてくれて本当に助かるよ。
▶叱り方
威圧的な態度や人前での叱責は「パワハラ」になるかも
人間関係の「温かさ」や場の空気を大切にするこのタイプに対して、高圧的・威圧的な言葉や態度はご法度。人前で叱るのもNG。「大変なのはわかっているよ」と共感を示したうえで、「でもね・・・」とミスや至らなかった点を指摘してあげるのがポイント。このタイプの女性は、他の社員が怒鳴られているのを見ているだけで、職場や上司が嫌になってしまうので注意が必要。
効果的なセリフ
頑張ってくれたのはよくわかっているよ。でもね・・・。
■■安全型:感情では動かない、冷静沈着な「研究肌」
▶褒め方
雰囲気で褒めるのは逆効果。事実を具体的に褒めると良い
感情では動かず頭で理解する安全型に対して、熱情型のように「すごいね〜」「やるね〜」などとノリで褒めても効果なし。根拠のないおだてには決して乗らず、逆に「どこがですか?」などと冷静に聞いてきて、「この上司、大丈夫?」と呆れられてしまう。この安全型の女性を褒めるときは「事実承認」が効果的。どこが良かったのかを具体的な事実をあげて褒めると良い。
効果的なセリフ
正確で丁寧な仕事だね。任せて良かったよ
▶叱り方
結論を押し付けず、ミスの原因は本人に考えさせる
自分の頭で考えて納得しないと動かないタイプなので、ミスをしたときにも頭ごなしに叱らない。たとえミスの原因が判っていたとしても、本人にどうしてミスをしたのか、なぜ結果が思わしくなかったのか、自分の頭で考えさせることがポイント。叱るというよりも一緒に問題点を洗い出し、解決策を導くという姿勢が大事。
効果的なセリフ
どこが悪かったのか、あなたはどう分析しているの?
■■各タイプへの好むアプローチ / 嫌うアプローチ
これまで解説してきましたように、それぞれの行動タイプには好むアプローチと嫌うアプローチがあります。以下に、ポイントを参考までまとめました。
最後に、これまでご紹介してきました「4つの行動タイプ」ですが、これらはあくまでも会話の糸口として活用し、大切なことは性別や役職などに捉われず、心から向き合って相手との対話に努めることが大事なことです。
文責 株式会社HRラーニング・サーチ 仲本親司