今回からビジネスの世界では約20年くらい前から注目されるようになりました。 近年、よく耳にするようになりましたが、一度、整理をして分かりやすく、ファシリテーションについて解説をしていきます。

ファシリテーションとは

ファシリテーション(facilitation)とは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味します。 その役割を担う人がファシリテーター(facilitator)であり、会議で言えば進行役にあたります。

組織の中におけるファシリテーション

組織を動かす機能として様々ありますが、その一つがこのファシリテーションです。ここではそのファシリテーションと、リーダーシップ、マネジメントの3つの機能を取り上げてみて見ましょう。

リーダーシップとは
メンバーを正しい方向に導く力です。環境変化に応じて、組織が存在する意味(ミッション)を明らかにし、組織が目指す目標(ビジョン)とそこに至る道筋(戦略)を指し示します。その上で、自らが望ましい行動の模範を示しながら、人をつくり、組織を育てていきます。常に変革の方向性を示し、それを推し進めてい くのがリーダーの本質的な働きとなります。

マネジメントとは
計画と制御をもとにして、メンバーをしっかりと管理することで組織を変えていくことです。

リーダーシップやマネジメントだけでは十分ではなくなってきた

・ リーダーシップ・・・「何を(What)」明らかにする

・マネジメント・・・・「どうやって(How)」を司る

目標、規則、制度、役割分担、資源配分計画などさまざまな「決まり事」を組織の隅々まで浸透させ、仕組み(システム)をつくりあげていきます。その上で、 仕事の進捗を管理し、達成度合いを素早くフィードバックして、業務を改善していきます。

ところが、社会の複雑化、高度化、不確実化が進み、環境の変化のスピードが上昇していき、“マネジメント”だけでは立ち行かなくなってきました。このようにリーダーシップとマネジメントは、組織変革に必要な働きであるが、それだけでは十分ではありません。トップダウン的なやり方ではなく、メンバーが持つ自発的な力を引き出し、自己変革へと導いていく力が必要となります。

そこで、ミッションや価値観を共有した人たちが自発的につながり、意見や利害を調整して、自分たちの力で物事を決めて実行していきます。作業手順や規則ではなく、原理原則によって仕事を進めていきます。そうすることで、問題解決の質とスピードを上げると同時に、当事者意識や自己成長を高め、新たな問題に向けて成長をしていくことができます。

 つまり、改めてファシリテーションとは

「人と人の相互作用(関係性)を促進する」働きである。人と人の関わりを創り、人の力を引き出し、個人を超えた相乗効果(創発)を生み出していくことです。

指導力(リーダーシップ)と管理力(マネジメント)に加えて、組織変革で不可欠なのが協働力、すなわち、ファシリテーションです。

ファシリテーションを一言でいえば、「人と人の相互作用(関係性)を促進する」働きです。人と人の関わりを創り、人の力を引き出し、個人を超えた相乗効果(創発)を生み出していきます。その結果、集団による問題解決、アイデア創造、合意形成、教育・学習、組織変革、自己表現・成長など、あらゆる知識創造活動を支援し促進していきます。また、その役割を担う人がファシリテーターであり、「協働促進者」または「共創支援者」と呼ばれています。協働を促進するとは、人と人の関係の質を上げることに他なりません。

ファシリテーションと「成功の循環」

「成功の循環(Success Cycle) 」

・関係性の質が変われば、新しいものの見方や考え方が生まれ、思考の質が変わっていく

・思考の質が変われば、それに伴い行動が変化していく

・その結果、最後には成果の質を変えることにつながっていく

これが、経営学者ダニエル・キム氏が提唱する成功の循環です。ファシリテーションとは、関係性に働きかけることを出発点にして、このサイクルを良い方向にドライブしようというものです。

ファシリテーターがプロセスを促進する

ファシリテーターは、さまざまなプロセスに関わることで協働を促進していきます。 わかりやすいよう、会議のファシリテーションを例に説明してみると、話合いを構成する要素が2つあります。1つは、会議のテーマ、メンバーの知識や経験、集めた事実や情報、意見やアイデアなど、内容にかかわるものです。これをコンテンツと呼びます。もう1つは、会議の進め方、議論の方法、相互の働きかけの仕方など過程に関わるものです。こちらをプロセスと呼びます。

ファシリテーターは、自分の思い描く正解に向けてコンテンツをコントロールするのではなく、プロセスを舵取りすることで、チームが自分の力で最適な答えを見つけるのを支援していきます。 そのため、コンテンツに対しては、中立的な立場で関わることになります。そうすることで、活動のイニシアティブを取りながらも、成果に対する主体性をチームに与え、チームの自律的な力を引き出すことができます。 さらに、メンバーの内面に目を向けると、別のプロセスがあります。 たとえば、今何を感じていて、どんな心の動きがあり、それがお互いにどのように作用し合っているのかという、「心理的なプロセス」です。これらが一体となって、チーム全体の関係性や場のムードをつくり、コンテンツの行方を左右しています。加えて、どのような枠組みや筋道で意見を思いついたのか、どこに思い込み(メンタルモデル)があって、なぜ自分の主張にこだわるのか、「思考的なプロセス」もあります。

ファシリテーターは、こういった内面的なプロセスにも働きかけ、気づきを促し、自律的な問題解決を脇役として支援していきます。

文責 株式会社HRラーニング・サーチ 仲本親司