(1)相続時精算課税制度のメリット

①25百万円までは非課税で贈与できる

目先の贈与時は25百万円までは非課税で財産を移転することができます。ただ、相続時には相続税が課される可能性がありますので、税金ゼロで済まないこともあります。

②受贈者が成人の孫で、親世代が健在である場合には、相続税を回避して財産の移転が行える

③早期に多額の財産を贈与することができる

相続人1人当たりの相続財産が一定金額以下であれば、相続税も課税されず早期に財産の移転を行うことができます。もし、将来の相続財産の試算が必要であれば有償にて対応させていただきます。

④収益物件の贈与は相続税対策となる可能性がある

毎年不動産収入を生むアパートやマンションである場合、毎年預貯金が増えることとなり将来の相続財産も増加します。一方、有権の移転により受贈者は登記費用、不動産取得税、固定資産税の負担が増加します。生前贈与が有利か相続時の移転が有利かの試算もしっかり行う必要があります。

⑤値上がりする可能性が高い財産を生前贈与することで相続税対策となる

都内7区や主要駅近隣のマンションは、新築時から一定期間は価値が増加するケースがあります。このような財産は、生前贈与することにより将来の相続税負担を軽減できる場合があります。

⑥相続争いの防止策となり得る 

贈与者の意思が明らかであることから生前贈与することによって将来の相続争いの防止策となる可能性があります。

(2)相続時精算課税制度のデメリット

①相続税が課税されること前提で設けられた制度であること

受贈者は贈与者の孫で、その親が存命である場合で、贈与財産が25百万円以下であること。これ以外のケースでは、基本的に相続税が課税されます。この制度は、相続税を回避する制度ではなく、将来の相続で移転される財産を早めに移転させる制度です。相続時精算課税制度で贈与された財産を含めた全ての財産の総額は、50百万円+相続人X6百万円以下であること。

②相続時精算課税を一旦選択した場合には撤回できない

相続時精算課税制度選択届出書を提出すると、撤回することができません。届出した贈与者からの贈与については、暦年贈与(毎年110万円の非課税枠)の適用は受けられません。ただし、他の贈与者からの贈与については、暦年贈与(毎年110万円の非課税枠)の適用を受けることができます。

③贈与税の申告

暦年贈与は、非課税内の贈与である場合には申告は不要です。一方、相続時精算課税は、税額の有無を問わず贈与が行われた場合には、その都度贈与税の申告する必要があるため事務手続きが煩雑となります。

④小規模宅地等の特例の不適用

相続時精算課税制度を利用して土地を贈与した場合、『小規模宅地等の特例』の適用を受けることはできません。贈与する資産は、将来の相続を想定して慎重に定める必要があります。

⑤生前贈与を受けた財産は物納の対象外

相続時精算課税制度を利用して、生前に贈与で取得した土地や建物を物納に充当することはできません。一定の要件を充たした場合には、相続で取得した土地や建物で相続税を支払うことができます。この点でも贈与を受ける資産の選定は慎重に行う必要があると言えます。 

⑥将来価値が逓減する資産は相続時精算課税精度に適合しない

建物は、経年劣化するためその価値が逓減します。相続時精算課税制度は、贈与時の相続税評価額で評価します。従って、建物は相続時に所有権の移転が行われた方が評価額が下がるので、上記(1)⑤で掲げるような物件を除き、相続時精算課税制度の対象としない方が有利となります。

⑦不動産取得税と登録免許税の税率の相違

相続により取得した土地又は建物に係る登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%の軽減税率の適用を受けることができます。一方、贈与により取得した土地又は建物に係る登録免許税は通常税率である2.0%で課税されます。また、不動産取得税は、相続による取得では非課税ですが、贈与による取得の場合には固定資産税評価額の3%が課されます。

 

【写真の解説】

イタリア北部に位置するヴェネチアでのゴンドラ観光です。川面から眺める街並みは素晴らしく、じっくり時間をかけて巡りたい街です。

 

ゴンドラ乗り場です。大運河の対岸の建物は、「水辺の貴婦人」と称されるサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会です。

細い川をゴンドラが何艘も重なって往来します。ヴェネチアを1枚で表現する光景です。

ゴンドラから見上げたヴェネチアの1カットです。国内線の飛行機を頻繁に目にしました。

ゴンドリエーレは、1本の櫓だけで操船します。右折する際には、建物を蹴って方向転換します。

このような橋をいくつも潜ります。帽子の男性はツアーガイドさんです。

さらに細い川を巡ります。ゴンドリエーレによって操船速度が異なります。のんびり進めてもらうとシャッターチャンスも増えます。

船着き場の後ろの格調ある建物は、最高級ホテルのバウアー・パラッツオ(Bauer Palazzo)です。